きらいだったはずなのに!
決意が鈍る前にと思って、昨日の今日だけど夕方から悠斗と会うことになっている。
時間になる前に、あたしは少しだけ目にかかるようになってきた髪を、朝一番で切りに行く。
重たい体をなんとか動かして大きな姿見の前に立つと、ぼさぼさ頭のちんちくりんが映し出された。
自分で言うのもなんだけど、目がおっきくて童顔なあたしには、正直いまみたいなナチュラル系のきれいめなショートヘアは似合ってない。
この髪型は……そうだなあ。もっと美人で綺麗な人が似合うと思う。
それでもあの日から……、別れたあの日からずっと、あたしは髪の毛を似合いもしないショートのままにしている。
これはきっとあたしにとって一種の呪いみたいになっている。
似合わないちぐはぐな髪をした自分を毎朝見るたびに、悠斗を思い出しては嫌悪感とあの日の悲しみでいっぱいになるんだから。
本当は、この髪型をしている自分も好きになりたい。
……だから昨日桐島さんがさりげなく言った「おまえはショート似合うよな」の一言に、少しだけ勇気をもらえたんだ。
あたしはひとつだけ大きく深呼吸して、寝ぐせだらけの短い髪を手櫛でそっと整えた。