きらいだったはずなのに!

【悠斗side】


 十六時を過ぎたのに、外はむせ返るような暑さだった。


 こめかみから流れる汗をそのままに、目的地まで足を速めた。


 遠目に待ち合わせ場所のマックが見えてきて、緊張が増してくる。


 また会いに行く、そう言ったけど、本当に今日こうして約束を取り付けられるとは思っていなかった。


 突然別れを切り出されたあの日から今日まで、一度も話すことがなければ、顔を合わせることさえなかった。


 そもそも学校で冷やかされることが増えてからは、話すことすら減ってたけど。


 昨日、別れてから一度もタップしていなかった茉菜とのトーク画面を、二年越しで開いた。


 メッセージの最後のやり取りは『おやすみ、また明日ね』なんてハートマーク付きだった。


 学校で気まずくたってメッセージくらい送っていればよかったなんて思ったけど、いまさらだ。



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