きらいだったはずなのに!

 俺がポニーテールが好きだというのは知っていたけど、髪の長さがそれをするには足りなかったのだと茉菜から聞かされたのは、付き合ってからすぐのことだった。


 付き合ってからの茉菜は俺が好きだからといつでもその髪型をしていて、肩につかないくらいだった髪はいつの間にか背中のあたりまできれいに伸びていた。


 だから、振られたあとに茉菜を見て思い知らされたのだ。


 短くなった髪を見て、もう本当に俺のことは好きじゃないのだと——。


「悠斗……?」


 茉菜からの困ったような呼びかけに、いつの間にか待ち合わせ場所に着いていたと気付かされた。


 時計を見ると約束の時間十分前だった。


 それにも関わらず、茉菜はもうそこにいた。


 いつも待たせていたから今日くらいはと、早めに家を出たのに。


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