きらいだったはずなのに!
「……待たせてごめん。来てくれてありがとう」
「ううん、大丈夫……」
茉菜も俺と同じで、少なからず緊張しているらしい。
……変わったな、そう思うけど、茉菜から見たら俺もそうなのだろう。
いつもバカみたいに明るく笑っていた茉菜は、今日は見たことのない固い表情をしている。
まるで、付き合っていたあの頃とは違うと、そう言われているみたいだった。
◇
「お気に入りのクレープ屋があるから、近くの公園で食べながら話そう」と言う茉菜のうしろを付いて歩く。
茉菜の寂しい首元には汗が伝っていた。
あの頃首元で揺れていた『しっぽ』が今はないという事実に少しの寂しさを感じる。
だけど、ずっとこの髪型でいることが俺への未練として表れているようだとも思う。
それを嬉しいと思ってしまうのは、自惚れだろうか。