きらいだったはずなのに!

 「彼氏くらい茉菜ちゃんならすぐできるよ! 茉菜ちゃんかわいいんだから自信持って!」とにこにこ笑いながら言うおばちゃんに、「そんなことないよー。でもありがとっ!」なんて照れたように言う茉菜。


 バカみたいだけど、その言葉にほんの少し安堵する。


 おばちゃんと話す茉菜の姿は中学の時と変わらず明るいまんまで、クリームといちごがたっぷり乗ったクレープを小さな両手で受け取る姿をかわいいと思った。


「……はい、悠斗の分」


「あ、さんきゅ」


 茉菜が俺にと選んだクレープは、チョコソースがかけられたバナナクレープ。


「……好み、覚えてた?」


 クレープ代の三百五十円を手渡しながら、茉菜に聞く。


 俺は生粋の甘党だ。意外って周りによく言われたけど。


 茉菜はふうとひとつ短いため息をついて、「二年しか経ってないんだから、覚えてるに決まってるじゃん」なんて呆れたように言った。


「いや、もうとっくに忘れられてると思ってた」


「……あっそ。あっちの公園にベンチあるから、そこで話そう」


 そう茉菜が目で促す先には森林公園があり、屋根付きの涼しげなベンチがあるのが目に入った。


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