きらいだったはずなのに!
ジージーと蝉の鳴く声が近くから聞こえてくる。
夕方といえどまだまだ暑くて、手に持ったクレープのクリームがどろりと溶ける感触が手に伝わってくる。
早く食べなくてはと思うけど、緊張してなかなか思うように食べられなかった。
ふと隣りを見ると、茉菜は口元をほころばせながらクレープにパクついていた。
「……なに?」
「……別に」
俺が見ていたことが気に食わなかったのかじと目でこっちを見る茉菜に「早く食べないとクリーム溶けるよ」なんて冷たい声で急かされて、俺もやっとクレープを食べ進めることができた。
「……話したいことがあるって言ってたけど、なに?」
先に食べ終わった茉菜が、俺が食べ終わったのを見計らって口を開く。
会って早々に本題に入るとは思ってなかったから、喉元で言葉が詰まってうまく出てこない。