きらいだったはずなのに!

 茉菜は大きな目をさらに丸くして、俺の方を見た。


「あたしのこと、ちゃんと好きだったってこと?」


「当たり前だろ!?」


 声を荒げた俺に、今度は目を潤ませた。


「じゃあどうして、『あんな女』とか『バカがうつる』なんてひどいこと、友達に言ったの……?」


「え……?」


 いまにも泣き出しそうな顔で、茉菜は拳を握りしめていた。


 その言葉には思い当たることがあった。


 いつかの放課後、悪友と雑談していたときに一度だけ口走ったことがある。


 でも、それはまったく本心ではなくて……。


「ひどいこと言ったのはごめん。けど、あの時友達が茉菜のこと狙ってるみたいなこと言ってたから、咄嗟についた嘘っていうか。なんていうか……」

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