きらいだったはずなのに!

 口をもごもごさせて謝る俺に、きょとんと眼を見開く茉菜。


 それで悟った。


 茉菜はあの時の言葉を聞いていたから、俺と別れるって決めたんだということ。
 

 ほんとのバカは俺だったんだ。


「あたし、悠斗はあたしのことなんて好きじゃないのかと思ってた。だからあんなにひどいこと言ったんだ、って」


「……うん」


「誤解、だったんだね」


 複雑そうな面持ちでうつむいた茉菜は、それっきり顔を上げる気配がない。


 まさか茉菜が聞いているなんて夢にも思わなかったから、すれ違いが起きていたなんて今の今まで考え至らなかった。


 ……でも、これで誤解が解けたのなら、まだ間に合うんじゃないかと心の中で自分に問いかける。


 茉菜のことがいまでも好きだと、もう一度付き合いたいと。


 そう言えば、前みたいに戻れるんじゃないかって。


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