きらいだったはずなのに!

 昨日会ったのは偶然じゃなく、またやり直せるようにと神様が与えてくれたチャンスなんだと、そう思ってた。


「でも、たとえ嘘だったとしても、そんなこと好きな人に言われたくなかったよ」


 震える声で茉菜が小さく呟いたから。


 きっといくら謝っても、想いを告げても、あの頃に戻れる日は来ないんだろう。


 だけど……。


「……振られたあの日から今日までずっと、茉菜のことが忘れられなかった」


 茉菜が俺に未練なんてないことは、とっくに気付いてしまった。


 短い髪のままなのも、失恋から立ち直れていないわけじゃなく、俺に嫌悪しているから伸ばさないのだと。


 それほど傷つけていたんだと、いまになって気付いたんだから。


 けれど、ここで言わなきゃ俺は一生後悔し続ける。


「茉菜のことが好きだ」


 手に握ったままだったクレープの包装紙がくしゃっと音を立てた。


< 134 / 276 >

この作品をシェア

pagetop