きらいだったはずなのに!

 ところで、このお兄さんはなにをしに家に来たんだ。


 それに、あたしになにか関係あるみたいだし。


 こんなイケメンがなんの用だろう。


 疑問に思いつつも、あたしもお兄さんの向かい側のソファーに座った。


 そして、タイミングを見計らったように、お兄さんが話し始めた。


 ……胡散臭い笑顔を浮かべて。


「自己紹介がまだだったね。初めまして、というよりさっきぶりかな? これから君の家庭教師をすることになりました。桐島(きりしま)陸斗(りくと)です。よろしくね」


 そう言って、握手を求めるかのように手を差し出してきたキリシマさん?


「あ、はい。よろしく……って、ん?」


 今、この人なんて言った?


「すみません、今なんと?」


 流れで握手をしそうになったけど、寸前でぴたりと手が止まった。


 キリシマ……、桐島さんが、なに?


 あたしたちの手は空中に浮いたまま。


 どちらともなくその手を下ろし、桐島さんは嫌がるそぶりを見せることなく、また説明し直してくれた。


「君の家庭教師をすることになった、桐島です。よろしくね」


 ……聞き間違いなんかじゃなかった。


 この人、“家庭教師”って。


 あたしのカテキョが、この人?


 マジか。

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