きらいだったはずなのに!

「知り合いっていうか、同じ中学で結構仲良かったんだよ」


「そっ、そう! 席も隣りになったことあるよね」


「ふうん。そうだったんだ」


 悠斗があたしのことを『元カノ』って言わなかったことに感謝しつつ、しどろもどろになりながら答えると、桐島さんは疑うような目であたしを見る。


 これはきっと、気付いてるんだ。


 あたしの元カレが悠斗だっていうことに。


「そんなことより、母さんは元気にしてる?」


「ああ、元気だよ」


 あたしの内情を知ってか知らずか、ふたりは淡々と会話を始めた。


 会話が逸れてほっとするけど、今度はふたりの話しを聞いていていいのか不安になる。


 だけど、時折会話を振ってくれるから、ここにいてもいいらしい。


 会話の中でわかったのは、桐島さんと悠斗のご両親は今年の春に離婚していること。


 悠斗はお父さんに、桐島さんはお母さんにそれぞれ引き取られたこと。


 だから名字が違うんだということだった。


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