きらいだったはずなのに!

「……茉菜」


 内心焦っているあたしに、悠斗は真剣な眼差しで言う。


「茉菜が誰を好きでも、俺の気持ちは変わらないから。……今日は来てくれてありがと。また、な」


 そう言って悠斗はあたしの頭をぽんぽんと撫で、桐島さんが帰っていった方とは逆方向に歩き出した。


 後ろでにひらひらと手を振りながら帰っていく悠斗の後ろ姿は、中学生だった頃より広く大きくなっていて、その見慣れない後ろ姿にほんの少しだけ胸がちくっと痛んだ気がした。





 いままでに感じたことのない疲れがどっと襲ってきて、のろのろと家に入った。


 遅かったわね、なんて声をかけてくるお母さんに適当に返事をして、自分の部屋に直行する。


「……なんか、疲れた」


 思わず独り言が零れるほど、体がぐったりと重いのを感じる。


 閉じたドアにそのまま寄り掛かり、ずりずりと座り込む。


 
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