きらいだったはずなのに!

 これからどうなっちゃうんだろう。


「それで今後の計画についてなんですが、お話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ええ、よろしくお願いします」


 綺麗な営業スマイルを浮かべた桐島さん。


 そんな彼を見て目をハートマークにするお母さん。


 これは、先行き不安だ。


 というかやっぱり、カテキョつくのは決定事項みたいだ。


「それでは説明させていただきますね。お母さまから事前にうかがった話ですと、僕はこれからこちらで週4日、茉菜さんの家庭教師をさせていただくということでしたが、間違いや変更等はなかったでしょうか?」


 そう言って何枚かの紙を黒いビジネスバッグから取り出した桐島さんは、できる男のにおいがプンプンする。


 料金の説明やら、勉強科目の設定とか、あたしの意見なんか関係ないというふうに、お母さんと桐島さんは話を進めていく。


 これはあたしがいる意味ないね。


 かといって抜け出せる雰囲気でもなく、仕方がないから桐島さんを観察することにした。


 それにしてもやっぱり、整った顔立ちしてるよね。


 おまけに高学歴だし、絶対モテてそう。


 そりゃ、こんな男の人がいたらさ、女の人は放っておかないよね。


 スーツの隙間からのぞく腕時計だって、なんか高そうだし。

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