きらいだったはずなのに!

 ……けれど、プールってこの辺だとどこにあるんだろう?


 海ならすぐ近くだけど、だからこそプールに行くなんて考え、あたしには考え付かなかったから。


「三駅先にあるんだよ。ちょっと穴場的なところ」


「そ、そうなんですね……!」


 あたしが知らないことを知ってる桐島さんに、嫌でも現実を突き付けられる。


 きっと、ほかの誰かと行ったことがあるんだろうなって。


 ……たとえば、彼女、とか。


「でも、女の子と遊びに行ったりして怒られたりしないですか? 彼女さん、とかに」


 自分から誘ったくせに、いざとなると弱気になってしまう。


 もごもごと聞き取りにくいだろう声で、あたしは探るように桐島さんにたずねる。


 だって、桐島さんに彼女がいるとしたらとんでもなく美人だろうし、あたしに勝ち目なんてない。


 彼女がいる人を好きになったことなんてないけど、そもそも人のものに手を出すような悪趣味なことはしたくない。

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