きらいだったはずなのに!

「彼女? いないから大丈夫。ていうかしばらくいない」


「ほんとですか……っ!」


 ……あれ。でもそうしたら、前に見た茶髪ウェーブの人はなんなんだろう。


「じゃあ、あの美人さんとはいったいどんな関係で……?」


 あたしが恐る恐るそう聞くと、桐島さんはいぶかし気な表情で首をひねった。


「誰のこと言ってんだおまえ」


「前に見ました。茶髪ウェーブの美人っぽい人と腕絡ませて歩いてたの」


 あたしが頬を膨らませながらそう言うと、桐島さんはピンときたようで「ああ」と一気に真顔になる。


「……んー、別になんでもないんだよな。ただの友達」


「へえー。桐島さんはただの友達と腕組んで歩くんですね」


 あたしがちくちくとした言葉でそう返すと、桐島さんはでっかいため息を吐く。

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