きらいだったはずなのに!

 そんなこと言って、約束うやむやになって流れちゃうんじゃないの?


「あの程度で満足してんなよ。約束は守るから」


 そう言いながら桐島さんは笑って、あたしのぷにぷにほっぺをつねった。


 その桐島さんの破壊力といったらもう、なんて言ったらいいのかわからない。


 最初に比べたらかなりマシになってきたけど、とあたしを褒める桐島さんの声なんか、もったいないけど右から左に完全スルーだ。


 つねられて赤くなっているであろうほっぺたをいまだに弄ぶ桐島さんは、「ぷにぷにー」なんて言いながらのんきにまだ笑ってる。


 あたしの心臓がドコドコとありえない音で鳴っていることに気付きもしないで。


 切れ長の黒い瞳が愛おしむようにあたしを見つめるけど、それは桐島さんにはあたしが犬に見えてるからなんだろうな。


 名残惜しいけど気持ちを打ち明ける勇気なんてまだなくて、別の理由で赤くなった頬に気付かれる前にと桐島さんの手を払いのけた。


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