きらいだったはずなのに!
10.ご褒美と進展

 課題漬けの毎日は驚くほどあっという間に過ぎていって、気付けば夏休みも終盤に差し掛かっていた。


 高一の夏休みなんて普通はみんな遊び呆けているんじゃないかって思うけど、対してあたしは本気で真面目に山盛りの課題を着実に消化していた。


 学生の本分は勉強というけれど、あたしはそれを体現していると思う。


 それもこれも、桐島さんとの約束を果たすためだ。


 だって、この機会を逃したら絶対もう外でなんて会ってもらえないもん。


 桐島さんの指導の時間も、いままでは雑談も交えて和気あいあいとした感じでやっていたけど、私語厳禁と言わんばかりの剣幕であたしが勉強に取り組んでいたから、桐島さんも今まで以上に熱心に教えてくれたと思う。


 一度だけ「そんなにプール楽しみ?」なんてにやついて言われたからちょっと焦ったけど、「そりゃあ夏だし」なんて言って無難にやり過ごした。


 そんな感じだったからもちろんいい雰囲気になんてなるわけもなく、ただの教師と生徒としてこの期間を過ごしていた。


 我ながらもったいない気もしたけど、すべてはプールに行くためだ!


 そこで少しでも距離を縮められたらいいな、なんて密かに思っていたりもする。

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