きらいだったはずなのに!
ぼーっと放心しているあたしのおでこに張り付いた前髪を手でよけて顔を覗き込んでくる桐島さんは本当に心配してくれているみたいで、抱きしめる腕の強さは変わることがない。
やっと我に返って、あたしは半泣きで叫んだ。
「なんで離したんですか、あたしのことーっ! 桐島さんのバカ―っ!」
急に叫び出したあたしに驚きつつもほっとしたような表情を浮かべた桐島さんは、冷静に「いや、離したのはおまえの方な!」とあたしとおんなじように叫んだ。
大丈夫なら離すぞって言われて、体は桐島さんから遠ざかったけど、あたしの体は抱きしめられている時と同じで熱いままだった。
ミヤコちゃんと悠斗が心配して傍に来てくれたけど、あたしは熱に浮かされたままでぼんやりとした返事しか返すことができなかった。
◇
なんやかんやありつつもついにお開きの時間になり、駅に着いた。
用事があると言う桐島さんと悠斗とは、ここでお別れだ。