きらいだったはずなのに!

「今日は本当にすみません。そしてありがとうございました……!」


 勢いよく頭を下げてそう言うと、「そのセリフ聞くの二回目」と桐島さんが笑う。


 電車の時間が近いからと、駅の改札へとミヤコちゃんに促される。


 名残惜しく思っていると、急に頭に桐島さんの手がのった。


 さてはまた犬扱いする気だな!


 ……そう、思っていたのに。


 あたしの予想とは裏腹にその手はふわりと優しく頭を撫でたあと、滑るように頬を撫でた。


 その指先が本当に優しくて、びっくりする。


 指先が離れていくのを目でたどり桐島さんを見上げると、なんとも言えない切ない表情をしていて、あたしの胸がきゅうと鳴った。


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