きらいだったはずなのに!

 あたしはバカだから、これも勘違いなのかもしれない。


 でも、だとしたら桐島さんは相当なやり手だ。


 だってこんなの、勘違いしないわけがないじゃん……っ!


 喉元から、出そうになる。


 思わず、「すき」って。


 だけど、桐島さんの後ろ遠くに悠斗の姿が見えて踏みとどまった。


 出せなかった言葉は喉に詰まって、痛い。


「じゃあ、またな」


「茉菜、行くわよ」


 桐島さんの声とあたしの腕を引っ張るミヤコちゃんの声は同時で、あたしはなにも言えないままミヤコちゃんと帰りの電車に駆け込んだ。


< 204 / 276 >

この作品をシェア

pagetop