きらいだったはずなのに!

 そうだったね。


 悠斗はクラスのムードメーカーで、周りが笑うならどんなことでも平気でやってのけちゃう、そんなやつで。


 あたしは、笑いのネタにされた。


 それに悠斗、あたしと付き合ってるって、言わなかった。


 あんな女って、バカだって。


 好きな人の口から吐き出された数々の言葉は、あたしを簡単に傷つけた。


 きつく噛んでいた唇は切れて血が出た。


 心が痛くて張り裂けそうだったのに、涙はひとつもこぼれなかった。


 それを聞いた翌日、あたしから悠斗に別れを告げた。


 悠斗の中では、自然消滅したことになってたのかもしれないけど。


 悔しくて、悲しかった。


 あたしの突然の言葉にただ目を見開いていた悠斗の顔は、今でもはっきり思い出せる。


 あたしから一方的に別れ話をしたあと、もう二度と悠斗と話すことはなく、冷やかしもからかいもいつの間にかされなくなっていた。


 付き合ったのは、たった二か月の間だけ。


 今となっては苦いいやな思い出。


 そしてあたしは、きらいになった。


 裏で、平気で人を傷つけることを言う人が。


 それと同じ匂いのする、二重人格、裏表ありの人、嘘つき。


 表では、誰にでも好かれるように振る舞うくせに、陰でひどいことを言う人が。


 あたしは、大きらいになった——。


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