きらいだったはずなのに!
13.きらいだったはずなのに
ペンを走らせる音だけが部屋に響いていた。
あたしの手元を静かに見ている桐島さんの視線を感じて目線を上げると、「ん?」って表情でこっちを見てくる。
なんでもないですよ、という意味を込めて何も言わずにまた問題に向き直ると、桐島さんはあたしが既に解いた問題の確認に移ったようだった。
秋はとっくの昔に過ぎ去って、辺りには雪がちらつく冬になっていた。
しばらく黙々と問題を解いていたけど、久しぶりに手が止まる。
「桐島さん、ここなんですけどー……」
「ん、どこ?」
「この大問二の(三)がわかりません」
「はいはい、ここは……」
指導の時間が短くなって必然と雑談も減り、ここ最近は勉強のことや進路のことしか桐島さんと話していない。