きらいだったはずなのに!

 もちろん部屋だって今までに見たことないくらいきれいにしたし、使えそうな教科書とか参考書なんかもそろえていたりする。


 なんだかんだ言って、実際焦ってるのは事実。


 勉強なんか大きらいだし、全然わかんない。


 だけど、いつまでもそんなこと言ってられないんだってこともわかってる。


 だって、この前担任が言ってたみたいに、もし将来やりたいことが見つかって、そのために大学に進学しなくちゃいけないってなったとき、このままじゃ絶対大学なんて受かるわけない。


 今はまだやりたいことなんて見つかってないけど。


 勉強ができないせいで好きなこと、好きな仕事ができなくなるのは嫌だって思ったから。


 そのためにも頑張りたいと思ってる。


 それに、このまま赤点ばっかりだと、高校卒業できるのかすらあやしい。


 すごくきついだろうけど、試練だと思ってやるしかないんだ。


 ぴかぴかに片付いた部屋でひとり意気込んでいると、インターホンが鳴り響いた。


 時計は午後六時をさしている。


 たぶん桐島さんだ。


 階段を下りて急いで玄関に向かうと、エプロンをつけたお母さんがすでにそこにいた。


 うん、桐島さんは相変わらずかっこいい。


 そして、普段より一オクターブは声が高いんじゃないかって思えるお母さんは、顔を見なくても目をハートにしていることは想像できる。


 こっちも相変わらずだ。

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