きらいだったはずなのに!
「茉菜、これあげる」
そんなあたしの様子を見るに見かねたのか、桐島さんがそう言ってグーにした手をあたしに突き出してきた。
飴でもくれるのかな、こんなんであたしをなだめようだなんて子供だましもいいところだ。
……なーんて思っていたのに。
「えっ」
そう言って桐島さんが差し出したのは、いつも身に着けていたシルバーのちょっとお高そうな腕時計だった。
「いやいや、さすがにそれは申し訳なさすぎますっ! もらえないっ! お高そうだし怖いですよ!」
こんなお高そうなものあたしに不釣り合いだし、桐島さんがずっとつけていたものだ。
大事に使っているものなんじゃないのかな。