きらいだったはずなのに!
だって、無表情だった。
それに、明らかに態度も雰囲気も違う。
声だってお母さんと話してた時よりだいぶ低かったし、ぶっきらぼうって感じ。
悩殺スマイルで『ありがとう』みたいな感じで言うと思ったんだけど。
それこそ『キラッ』なんて効果音がつくレベルで。
……これ、いやな予感しかしない。
外れてくれ、あたしのカン。
だけど、こういう悪い予感っていうのは大概当たるもの。
部屋の扉が閉まった瞬間、あたしは彼の本性を目の当たりにすることになった。
「あー、やっぱ作るのって疲れるわ」
首をコキコキと鳴らし、部屋の中央に置かれたローテーブルについた桐島さんを見て、あたしは開いた口がふさがらなかった。
「は? おまえ突っ立ってなにしてんの? 早く座れよ」
自分の部屋にいるかのようなくつろいだ態度でそう言う桐島さん。
呆然として、棒立ち。
なにこの人。誰この人。
さっきまでの爽やかイケメンお母様キラーはどこいったの?