きらいだったはずなのに!

 周りには常に誰かがいたし、ひとりでいることなんて全くなかった。


 そんなあたしとは違って、見ると大抵ひとりでいたミヤコちゃん。


 高嶺の花って感じで、好きというより憧れに近いなにかを彼女に抱いていた人は、少なくない。


 女子からも男子からも、彼女の悪い話は聞いたことがなかった。


 美人で男の子に人気があったにも関わらず、むしろ女の子からひっそりと羨望のまなざしで見られていたミヤコちゃん。


 あたしも、そのひとりで。


 放課後の裏庭、お互いひとり。


 周りには誰もいない。


 そんな好条件がそろって、はじめて彼女に話しかけた。


 たった一言、「失恋しちゃった」って。


 あたしはミヤコちゃんのことを知っていたけど、あの時のミヤコちゃんは当然あたしなんか知らなかっただろう。


 いきなりなに言ってんだこいつって目で見られるかな、なんて思ったんだけど。


 彼女は黙ってあたしの隣りに座って、あたしの話を聞いてくれた。

< 40 / 276 >

この作品をシェア

pagetop