きらいだったはずなのに!

 その瞬間、体がぐらりと傾いた。


 椅子の上でバランスをとろうとすればするほど、不規則にがたがたと動く。


 ああ、もうだめ。


 ほんとに落ちるっ……。


 桐島さんにダイブとか言ってる場合じゃなかった。


 変な意地張らないで素直に頼んでおけばよかった。


 体が宙に浮いて、次にくるであろう痛みにぎゅっと目をつぶった。


 どんっと鈍い音をさせて背中から確実に落ちた。


 ……はずだけど、あれ?


 全然痛くない。なんで?


 目を開くと、天井。


 落ちたの夢かと思ったけど、現実じゃん。


 なんで痛くないんだ。


 まさか、痛覚なくなった?


「おまえ、重い。つか、痛え……」


「んえっ!?」


 耳元から聞こえた桐島さんの声で我に返った。


 そういえば、やけに背中があったかいような?


 そして、床にしては柔らかいような?


 起き上がって、本気でびっくりした。


 あたし、マジで桐島さんにダイブしちゃったらしい。

< 46 / 276 >

この作品をシェア

pagetop