きらいだったはずなのに!

 でも、ミヤコちゃんはズバッとはっきり言うけど、本当は優しかったりするんだ。


「で、茉菜。あんた今回のテスト赤点とったらやばいって言ってなかった? 大丈夫なの?」


 そう言ったミヤコちゃんは、髪の毛を指にくるくると巻きつけている。


 クールな表情を保ってるけど、落ち着かなかったり心配事があるときは、ミヤコちゃんはこうして髪の毛を触るんだ。


 あたしのことをバカって言いつつ、心配してくれちゃうから大好き!


 ニヤニヤしてたらミヤコちゃんに冷たい声で「気持ちわる」なんて、本気で引かれた目で見られたけど。


 うーん、ツンデレさんの扱いはやっぱり難しい。


 ……って、こんなにのんびりしている場合じゃなくって!


 危機的状況なのには変わりないんだってば。


 ミヤコちゃんの優しさに浸ってる時間なんてないんだった。


 放課後の補習は明日からさっそく始まるし、なによりお母さんから恐怖のメッセージが届いてた。


『話があるからさっさと帰ってこい、バカ娘』


 いつもは年甲斐もなく絵文字でゴテゴテなメッセージを送ってくるのに、今日に限っては色がひとつもない。


 おまけに言うと文末に丸すらついてない。


 これは相当怒っていらっしゃる。


 ますます帰りたくなくなったんだけど。

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