きらいだったはずなのに!

「で、なんで泣いたの。そんなに痛かった?」


「は?」


 じっとあたしの顔を覗き込んでいるかと思ったら、話を巻き戻したよこの人。


 桐島さん、話ちゃんと聞いといてよ。


 その前に手を離してください。


「は? じゃなくて。なんで泣いたのって聞いたんですけど、おバカさん。マジでそんな痛かった?」


 これは、あれか? 心配してるのか?


 そんなに心配するくらいなら殴るなよ。


 かなり痛かったから。


 桐島さん手でかいし、あたしの顔面すっぽりだったし、結構いい音したんだよ。


 あ、思い出したらムカついてきた。


「痛かったに決まってんでしょ! 謝れ! っていうか、上に落ちたくらいで、なんであんな叩いたの? これ以上ブサイクになったらどうしてくれんの!?」


 怒り爆発。


 桐島さん、ちょっとびっくりしてる。


 だけど、そんな表情のあと、目を一気に鋭くした。


「アホか! 落ちたことなんてどうでもいいんだよこの能無しが! 俺に頼めばよかっただろ! それくらい頼めよ間抜け!」

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