きらいだったはずなのに!

「ミヤコちゃーん、お母さんめっちゃ怒ってるんだけど。どうしよ、帰りたくない~」


「うるさいバカ娘。さっさと帰って勉強しなさい」


「……はい」


 完璧、泣きつく相手を間違えた。


 ミヤコちゃんにも冷たくあしらわれたし、早く帰らない方が怖い気がするし。


 仕方ない、帰ろう……。


 最後に恨めし気にミヤコちゃんを見たら、倍以上の威力で睨み返された。


 こわい、こわい。


 いつも一緒に帰ってるんだけど、今日ミヤコちゃんは日直だから、すぐには帰れないみたい。


 ひとり寂しく学校の玄関を通り抜け、とぼとぼと家に向かう。


 ミヤコちゃんがいない帰り道って、つまんない。


 グラウンドからは、野球部が部活している声が聞こえてくる。


 ボールを打つ時の金属音、土を踏む音まではっきり聞こえる。


 ひとりで帰るのは今日が初めてで、いつもは聞こえない周りの音が聞こえてくるのがなんだか新鮮。


 寂しいことに変わりはないけど。


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