きらいだったはずなのに!

 片耳にだけイヤホンを差し込んで、お気に入りの曲を流す。


 こんなんじゃ、全然気分は晴れないけど。


 そうだ、コンビニ寄って帰りのお供でも買っていこうかな?


 入学してから早二か月。


 季節は初夏、六月に入って一週間が経った。


 最近梅雨入りしたせいかむしむしと暑くて、アイスかキンキンに冷えたジュースでもないとやってられない。


 あたし、めちゃくちゃ暑がりだから。


 ちょうど先に馴染みのコンビニが見えてきて、足を速めた。


 お気に入りの曲は、ロック。


 アップテンポな曲にノッてきたのにも加えて、足取りはさっきよりも軽くなった。


「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」


 曲がサビにかかった瞬間、すぐ真後ろから聞こえてきた男の人の声。


 誰だよ。


 せっかくサビに入ってテンション上がってたのに。


 ……と思いつつ、イヤホンを外して振り返った。


「なんですか? ……うわっ!」


 予想外に距離が近くてびっくりした。


 目の前には、その人の胸。


 上を向いて顔を見て、さらにびっくり。


 この人、ありえないくらいかっこいいんだけど!


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