きらいだったはずなのに!

 ……かと思ったら。


「茉菜、すげーじゃん! よくやった!」


「っ!」


 桐島さんはそう言うと、満面の笑みであたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。


 彼からは怒りのオーラが消えて、キラキラした笑顔であたしを見ている。


 えっと、なんかすごい喜んでる?


 というか、こんなストレートに褒めてもらえるなんて思ってなかった。


 桐島さんはまだ、「すげーすげー」なんて言いながらあたしの髪を乱している。


 あたしは犬か!なんて思ったけど、嬉しいから許す。


 それに、なんだかちょっぴり照れ臭い。


「へへ、嬉しいなっ!」


 うん、頑張ってよかったよね!


 桐島さんもこうして喜んでくれたし、褒めてくれたし。


 さっきまでのもやもやした気持ちが晴れて、桐島さんを見上げて笑う。


 すると、頭の上にのった桐島さんの手がぴたりと止まった。

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