きらいだったはずなのに!
さらっさらの黒髪に、切れ長の瞳。
長いまつげに縁取られたその中は、真っ黒で煌めいていた。
背だって高くて、たぶん175センチ以上はあるはず。
鼻筋も通っていて、嫌味なくらい整っちゃってる。
スーツ姿だけど社会人っぽくないからたぶん大学生だと思われる。
そんなマンガの世界から飛び出してきたようなイケメンが、すぐ傍に立っていた。
……でも、なんだろう。
この人、どこかで見たことあるような、ないような?
そんな気がするんだけど、気のせいかな。
それに……。
「急に驚かせちゃってごめんね? 聞きたいんだけど、この辺りで“杉浦さん”ってお宅、どこにあるか知らないかな?」
じろじろと不躾に見ていたにも関わらず、にこりと笑みを浮かべる目の前のお兄さん。
ああ、わかった。
この人、目が笑ってないんだ。
通りすがりのあたしなんかに心からの笑顔を向ける必要なんてないけど、その目を少しだけ、怖いと思った。