きらいだったはずなのに!
――その時。
「茉菜!」
後ろから、悠斗が呼ぶ声が聞こえた。
必死さが伝わるその声に、自然と足が止まってその場に立ち尽くした。
後ろは振り返れない。
悠斗は、今、どんな顔をしてるのかな。
なんで、呼び止めたりなんかしたのかな。
呼び止めたくせに、近づいてくる気配も、なにかを言おうとする気配もない。
さっき流れた涙を拭って、今度こそ帰ろうと足を一歩踏み出した。
「俺、茉菜に聞きたかったことがある。言いたいこともある。全部、あの時言えないでいたことだ。……だから、また来る」
震えた声で途切れ途切れに言う悠斗になにも言えず、あたしは家に向かって走った。