〈BL〉俺たち結婚しました〈短編〉
第六話∽葡萄狩り
俺の腫れも引き、
今日は紗葵君が
行きたがっていた葡萄狩りの日。
天気は良好。
「サキ、晴れてよかったな」
大樹君が紗葵君の頭を撫でた。
俺も葵君も嬉しい。
新幹線に乗って山梨まで来た。
日帰りだから、
ちょっと慌ただしい。
そして、予め
調べといた牧野園に
タクシーで向かった。
『沢山採ったな』
渡された籠
いっぱいいっぱいに
葡萄を入れてる紗葵君。
そんな、楽しそうな声は
見知らぬ女性が
話しかけて来たことで
中断された。
「紗葵?」
振り返って、
その女性を見た瞬間に
紗葵君が葡萄の籠を
俺に押し付けて走り出し、
彼女も追いかけて行った。
『葵君、今の人誰?』
『元カノ』
成る程、紗葵君の元カノかぁ。
昔、何かあったのかな?
それで逃げだしたとか。
「何時の彼女なんだ?」
そりゃ、気になるよなぁ。
立場上、今は紗葵君が
“奥さん”だけど、
本当なら男なんだから
旦那さんに
なってたはずなんだし。
『確か、
高校二年と三年の
間だったかな』
大樹君は難しい
顔してしまった。
『紗葵君を
探しに行こうよ』
とりあえず、
あの二人を
見つけなければ
話しが始まらない。
「そうだな、探すか」
戻ってくるかも
しれないと思って
葵君はその場に残り、
俺と大樹君が
探しに行くことになった。
周りに人は沢山いるが
所詮、他人事。
我関せずと各々で
葡萄狩りを楽しんでいる。
『紗葵君、いたら返事して!!』
「サキ、戻って来い!!」
入口付近まで来たが
あの女性も
紗葵君も見当たらない。
本当に何処に行ったんだろう?
もう一度、中に戻ってみるか。
「アオ、二人
戻って来たか?」
さっきの場所まで
戻って来たけど、
二人はいなかった。
『いや、来ていない』
意外と広い牧野園。
「戻って来てると
思ったんだけどな……」
俺もそう思ってた。
『ねぇ葵君、
紗葵君は彼女に
話し掛けられた途端に
逃げだしたけど
何かあったの?』
気になったのはそこだった。
ただの元カノなら
逃げ出す必要はないはず。
四人の中で最年少の
俺だって、彼女くらいいたし
数年経った今再会しても
普通に話せる自信がある。
『本当は紗葵を
見つけてから
話すべきなんだろうが
やむを得ないな』
人の邪魔にならないように
隅に行き、しゃがんだ。
紗葵君に声を
掛けて来た女性は
名前は真壁時恵、
付き合ってた当時は
高沢家にも
来たことがあるらしい。
しかし、三年になって
直ぐに彼女の
浮気がバレて大喧嘩になり、
別れ、卒業後は今日まで
会うことがなかったとうのが
葵君が話してくれたことだ。
「納得した。
そりゃ、
逃げたしたくなるな」
最後が嫌や思い出なら
確かに俺も逃げたくなる。
『だろう?
しかし、紗葵は
何処に行ったんだ?』
まさか、牧野園から
出ちゃったのだろうか?
落ち着いてられなくて
携帯を開いたり閉じたりを
繰り返しなから二人を待った。
二人が
いなくなってから
既に三十分は
経とうとしている。
『何処に行ったんだろう?』
俺たちの携帯は鳴らない。
外に出たいが
すれ違いになると
困るから中々動けない。
更に三十分後、
やっと大樹君の携帯が鳴った。
「何処に居る?」
「何処も何も、
最初の場所に
俺もアオもヒロも居るぞ
早く戻ってこい」
今の大樹君の顔を
紗葵君に見せてあげたい。
心配そうな、泣きそうな顔。
「わかってんだけどよ
あの女、男と一緒に
来たらしくて、
俺が出てったら
捕まえさせる気みたいなんだ」
それはまた、
面倒なことになってるな……
紗葵君も大変だ。
しかも、嫌な別れ方をした
元カノとかできるなら
一生会いたくないよな。
『お前、どの辺にいるんだ?』
大樹君に貸せと
仕草で示して代わった。
「入り口付近」
入れ違いになったかな?
『わかった。
そこ、動くなよ?
今から行くから待ってろ』
それだけ言って、
大樹君に携帯を返した。
『てなわけで、
紗葵を迎えに行くぞ』
やれやれ、行きますか。
十五分後、
俺たちは合流できた。
しかしながら、
当然、そこには
紗葵君の元カノも居るわけで……
会えたことで
安心したのか、
俺たちを見つけると
一目散に大樹君に抱き着いた。
かなりの勢いで
走ってきた紗葵君を
なんなく受け止めた。
「お帰り」
抱きしめたまま
紗葵君の耳元て囁いた。
「ただいま」
その言葉と共に
抱きしめる力が
強くなり俺と葵君は
苦笑いしてしまった。
チラッと横を見れば
案の定、元カノは
ポカ-ンとした顔をしている。
更に、紗葵君が
爆弾を投下した……
「大樹、キスして」
首を傾げ、おねだりする。
俺たちにしてみれば
何でもない日常の
ひとこまでしかない。
『紗葵、
流石に此処で
おねだりするなよ。
せめて、帰りの
新幹線に乗ってからにしろよ』
葵君、それも
何か違うって……
高沢家の人たちは
何処か論点が
ズレている気がする。
特に、この兄弟は。
「な、なんなのよ
あんたたち!!」
ついにキレたらしい
彼女が俺たちに向かって
大声で怒鳴った。
「ふうふ」
あっさりと答えたのは
またもや紗葵君だ。
大樹君におねだりした
その口で“ふうふ”と
当たり前に言った。
「男同士で
“ふうふ“って
本気で言ってるわけ?
笑わせないでよ!!
気色悪い……」
どう思うかは
個人の問題だが
今のは聞き捨ってならないな。
俺たちは同性同士だけど
真剣に恋愛をしている。
『それは、
聞き捨ってならないなぁ。
俺と隣に居る大海も
“ふうふ”だが
この関係を
恥じたことは一度とない』
葵君が俺を
ギュッと抱き寄せながら
鋭い口調で言った。
流石旦那様。
思ってることは
同じだもんな。
「そういうことだ
気色悪いなら
金輪際、俺に関わるな」
俺たちに「悪かったな」と
言って、大樹君と
手を繋いで
彼女たちの前を
通り過ぎて行った。
何も言わない彼女たちを
一瞥してから、俺も
葵君と手を繋いで
二人の後を追った。
こうして、ちょっと
ハプニングがあったものの
四人で帰りの新幹線に
乗って帰り、
無事、家に着いた。
「今日は本当に悪かった」
本日二度目の謝罪。
別に紗葵君は悪くない。
「サキが悪いわけじゃないさ。
そんなこと、ヒロもアオだって
解っるんだから謝るなよ」
俺や兄の葵君より先に
言葉にして言ったのは
旦那様の大樹君だ。
行動が早い。
「大樹……」
全くもって、その通りだ。
『そうだよ。
俺も葵君も大樹君の
言う通り、紗葵君が
悪くないって解ってるんだよ』
耐え切れなく
なったのか、普段は気の強い
紗葵君が静かに泣き出した。
目からポロポロと
涙が次から次へと出てくる。
『泣くなよ』
葵君がお兄ちゃんの
顔をして紗葵君の頭を撫でた。
こういう
優しいところも大好きだ。
「俺たちはサキが
大好きで大切なんだ。
家族なんだから」
ニッコリと大樹君が笑った。
うちの家族は
優しい人たちばかりだ。
『あんなん女の
ことなんて
さっさと
忘れちゃいなよ』
嫌なことは
忘れてしまえばいい。
『そうだぞ紗葵
お前には俺や大海や
大樹だって、三家の
両親だっているんだ。
昔の奴のことは
忘れてしまえばいい』
以心伝心ていうのか
俺と葵君は大体、
考えてることが同じだ。
「うん……」
泣き止んでくれてよかった。
色々あった、
一日だったけど
無事に四人揃って
帰ってこられて嬉しい。
今日は紗葵君が
行きたがっていた葡萄狩りの日。
天気は良好。
「サキ、晴れてよかったな」
大樹君が紗葵君の頭を撫でた。
俺も葵君も嬉しい。
新幹線に乗って山梨まで来た。
日帰りだから、
ちょっと慌ただしい。
そして、予め
調べといた牧野園に
タクシーで向かった。
『沢山採ったな』
渡された籠
いっぱいいっぱいに
葡萄を入れてる紗葵君。
そんな、楽しそうな声は
見知らぬ女性が
話しかけて来たことで
中断された。
「紗葵?」
振り返って、
その女性を見た瞬間に
紗葵君が葡萄の籠を
俺に押し付けて走り出し、
彼女も追いかけて行った。
『葵君、今の人誰?』
『元カノ』
成る程、紗葵君の元カノかぁ。
昔、何かあったのかな?
それで逃げだしたとか。
「何時の彼女なんだ?」
そりゃ、気になるよなぁ。
立場上、今は紗葵君が
“奥さん”だけど、
本当なら男なんだから
旦那さんに
なってたはずなんだし。
『確か、
高校二年と三年の
間だったかな』
大樹君は難しい
顔してしまった。
『紗葵君を
探しに行こうよ』
とりあえず、
あの二人を
見つけなければ
話しが始まらない。
「そうだな、探すか」
戻ってくるかも
しれないと思って
葵君はその場に残り、
俺と大樹君が
探しに行くことになった。
周りに人は沢山いるが
所詮、他人事。
我関せずと各々で
葡萄狩りを楽しんでいる。
『紗葵君、いたら返事して!!』
「サキ、戻って来い!!」
入口付近まで来たが
あの女性も
紗葵君も見当たらない。
本当に何処に行ったんだろう?
もう一度、中に戻ってみるか。
「アオ、二人
戻って来たか?」
さっきの場所まで
戻って来たけど、
二人はいなかった。
『いや、来ていない』
意外と広い牧野園。
「戻って来てると
思ったんだけどな……」
俺もそう思ってた。
『ねぇ葵君、
紗葵君は彼女に
話し掛けられた途端に
逃げだしたけど
何かあったの?』
気になったのはそこだった。
ただの元カノなら
逃げ出す必要はないはず。
四人の中で最年少の
俺だって、彼女くらいいたし
数年経った今再会しても
普通に話せる自信がある。
『本当は紗葵を
見つけてから
話すべきなんだろうが
やむを得ないな』
人の邪魔にならないように
隅に行き、しゃがんだ。
紗葵君に声を
掛けて来た女性は
名前は真壁時恵、
付き合ってた当時は
高沢家にも
来たことがあるらしい。
しかし、三年になって
直ぐに彼女の
浮気がバレて大喧嘩になり、
別れ、卒業後は今日まで
会うことがなかったとうのが
葵君が話してくれたことだ。
「納得した。
そりゃ、
逃げたしたくなるな」
最後が嫌や思い出なら
確かに俺も逃げたくなる。
『だろう?
しかし、紗葵は
何処に行ったんだ?』
まさか、牧野園から
出ちゃったのだろうか?
落ち着いてられなくて
携帯を開いたり閉じたりを
繰り返しなから二人を待った。
二人が
いなくなってから
既に三十分は
経とうとしている。
『何処に行ったんだろう?』
俺たちの携帯は鳴らない。
外に出たいが
すれ違いになると
困るから中々動けない。
更に三十分後、
やっと大樹君の携帯が鳴った。
「何処に居る?」
「何処も何も、
最初の場所に
俺もアオもヒロも居るぞ
早く戻ってこい」
今の大樹君の顔を
紗葵君に見せてあげたい。
心配そうな、泣きそうな顔。
「わかってんだけどよ
あの女、男と一緒に
来たらしくて、
俺が出てったら
捕まえさせる気みたいなんだ」
それはまた、
面倒なことになってるな……
紗葵君も大変だ。
しかも、嫌な別れ方をした
元カノとかできるなら
一生会いたくないよな。
『お前、どの辺にいるんだ?』
大樹君に貸せと
仕草で示して代わった。
「入り口付近」
入れ違いになったかな?
『わかった。
そこ、動くなよ?
今から行くから待ってろ』
それだけ言って、
大樹君に携帯を返した。
『てなわけで、
紗葵を迎えに行くぞ』
やれやれ、行きますか。
十五分後、
俺たちは合流できた。
しかしながら、
当然、そこには
紗葵君の元カノも居るわけで……
会えたことで
安心したのか、
俺たちを見つけると
一目散に大樹君に抱き着いた。
かなりの勢いで
走ってきた紗葵君を
なんなく受け止めた。
「お帰り」
抱きしめたまま
紗葵君の耳元て囁いた。
「ただいま」
その言葉と共に
抱きしめる力が
強くなり俺と葵君は
苦笑いしてしまった。
チラッと横を見れば
案の定、元カノは
ポカ-ンとした顔をしている。
更に、紗葵君が
爆弾を投下した……
「大樹、キスして」
首を傾げ、おねだりする。
俺たちにしてみれば
何でもない日常の
ひとこまでしかない。
『紗葵、
流石に此処で
おねだりするなよ。
せめて、帰りの
新幹線に乗ってからにしろよ』
葵君、それも
何か違うって……
高沢家の人たちは
何処か論点が
ズレている気がする。
特に、この兄弟は。
「な、なんなのよ
あんたたち!!」
ついにキレたらしい
彼女が俺たちに向かって
大声で怒鳴った。
「ふうふ」
あっさりと答えたのは
またもや紗葵君だ。
大樹君におねだりした
その口で“ふうふ”と
当たり前に言った。
「男同士で
“ふうふ“って
本気で言ってるわけ?
笑わせないでよ!!
気色悪い……」
どう思うかは
個人の問題だが
今のは聞き捨ってならないな。
俺たちは同性同士だけど
真剣に恋愛をしている。
『それは、
聞き捨ってならないなぁ。
俺と隣に居る大海も
“ふうふ”だが
この関係を
恥じたことは一度とない』
葵君が俺を
ギュッと抱き寄せながら
鋭い口調で言った。
流石旦那様。
思ってることは
同じだもんな。
「そういうことだ
気色悪いなら
金輪際、俺に関わるな」
俺たちに「悪かったな」と
言って、大樹君と
手を繋いで
彼女たちの前を
通り過ぎて行った。
何も言わない彼女たちを
一瞥してから、俺も
葵君と手を繋いで
二人の後を追った。
こうして、ちょっと
ハプニングがあったものの
四人で帰りの新幹線に
乗って帰り、
無事、家に着いた。
「今日は本当に悪かった」
本日二度目の謝罪。
別に紗葵君は悪くない。
「サキが悪いわけじゃないさ。
そんなこと、ヒロもアオだって
解っるんだから謝るなよ」
俺や兄の葵君より先に
言葉にして言ったのは
旦那様の大樹君だ。
行動が早い。
「大樹……」
全くもって、その通りだ。
『そうだよ。
俺も葵君も大樹君の
言う通り、紗葵君が
悪くないって解ってるんだよ』
耐え切れなく
なったのか、普段は気の強い
紗葵君が静かに泣き出した。
目からポロポロと
涙が次から次へと出てくる。
『泣くなよ』
葵君がお兄ちゃんの
顔をして紗葵君の頭を撫でた。
こういう
優しいところも大好きだ。
「俺たちはサキが
大好きで大切なんだ。
家族なんだから」
ニッコリと大樹君が笑った。
うちの家族は
優しい人たちばかりだ。
『あんなん女の
ことなんて
さっさと
忘れちゃいなよ』
嫌なことは
忘れてしまえばいい。
『そうだぞ紗葵
お前には俺や大海や
大樹だって、三家の
両親だっているんだ。
昔の奴のことは
忘れてしまえばいい』
以心伝心ていうのか
俺と葵君は大体、
考えてることが同じだ。
「うん……」
泣き止んでくれてよかった。
色々あった、
一日だったけど
無事に四人揃って
帰ってこられて嬉しい。