理論と刀と恋の関係。
『あのね?遥花』



それは、遠い日の記憶だった。



『遥花っていう名前は、遥か彼方の “遥” に、野花の “花” と書くでしょう?』



空色のワンピースを着た幼い頃の私が、お母さんと手を繋いでいる。



懐かしい、公園の帰り道。



『それはね、お父さんとお母さんが、あなたに名前をつけるとき、こう願ったからなのよ…』



『お母さんたちは、なんてお願いしたの?』



歩みを止め、お母さんを見上げる私。



お母さんは優しく微笑み、私の肩に手を置きこう言った。



『それはね…。





〝遥か彼方遠くでも咲き誇る花のように、
強く、真っ直ぐ生きる子になりますように〟』















___________ねえ、お母さん。



私は、とんでもなく遠くまで来ちゃったみたい。



もう2度と、家族と会えないかもしれないほど…とても遠いところまで。



正直ね、もう挫けそうだったの。



強気に、前向きに。



そうやって、自分に暗示をかけていた。



これからも、その暗示はかけ続けていくのかもしれない。



…でもね、私、決めたの。



ちゃんと、真っ直ぐ生きていく。



この幕末の世で。



…ねえお母さん、覚えてる?



私はあの後、こう言ったの。



『わたし、つよくなる!』



…私は証明してみせるよ。



あの言葉は、決して嘘なんかじゃないって。



だからね、心配しないで。



______きっと、強くなってみせるから。
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