理論と刀と恋の関係。
(さ…叫んじゃった)



みなさん覚えているだろうか。



“Chronology of the late Edo period”…日本語訳すれば、“幕末年表”。



そう、中村くんとの試合前に、剣術ノートと一緒に作ったもう1冊のノートのことだ。



この時代の日本人からすれば訳の分からない言語(英語)で書いているわけだし、内容も内容なので、1人の時にこっそりと書くしかなかった、このノート。



(でも、今なら)



沖田さんはいない、しかも30分たっても帰ってこない。



ちなみに、彼はこういう時、大抵どこかに遊びに行っているというのも分かっている。



…この雨の中、どこに遊びに行っているのかは謎だけど。



まあとにかく、あと1〜2時間は帰ってこないと見ていいだろう。



つまり…チャンスなのだ。



(よし!)



私は素早く赤いバッグを引き寄せ、中から例のノートと筆箱を取り出した。



「…沖田さん、借りますっ」



小声で断りを入れ、沖田さんの文机の前に座る。



カチカチ、とシャープペンシルをノックしながら、年表のレイアウトを考えた。



(まず、基準は徳川幕府の将軍とするとして…壬生浪士組が結成されたのは1863年、文久三年だから将軍は14代の…徳川───徳川───────家茂?)



「うん、きっとそれだ」



さらさらとノートにペンを走らせる。



(起こった出来事…。
徳川家茂が上洛、とか?将軍が上洛するのは200何年振りとかだった気がする。
それから、長州藩がアメリカやフランスの船を攻撃…これは下関戦争に繋がるヤツ。
あとは…?
…うーん、あ!イギリスの王子様とデンマークの王女様の結婚とか!?)



「いやいや、それはどうでもいいわ」



色々とツッコミを入れながらも、私は年表を書いていった。



徳川幕府の動き、新撰組の動き、長州藩や倒幕派の動き、そして世界の出来事___



書き出していくことで、昔学んだ記憶がずるずると引き出されていく感じがする。



(そうよ、そして…1864.06.05______
__________池田屋事件)



そこまでノートに書き入れた瞬間、私の中で、幼い頃読んだ文章がフラッシュバックした。













   ・沖田総司、労咳による喀血(?)












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