理論と刀と恋の関係。
「只今帰りましたー!」



湿気で少し重たい部屋の障子を開ける。



「…あれ?遥花さん?」



しかし、そこに彼女の姿は無かった。



無造作に置かれた彼女の赤色の持ち物。



文机の上に散らばった未来の筆記具。



少し形の歪んだ座布団。



…まるで、彼女がついさっきまでここに座っていたかのような_________…



(〜っどこに行ったんですか!)



水浸しのまま、今度は廊下を走ってゆくことになった。




* * *




「………ょ…ぁー…?」



「…ぃぇ………ゃ…」



土方さんの部屋の前に来た。



小声だが、誰かが喋っている声がする。



あれは______土方さんと山崎くん?



僕は障子に耳をくっつけた。



「_______そいで、宮瀬がこれを_」



( “宮瀬”!?)



バンッ…



反射的に、障子を開け放つ。



中には、咄嗟に!という感じで装束の合わせに手を入れた山崎くんと、刀に手をかけた土方さん、そして…



…冊子状になっている紙の束を抱えた、彼女がいた。
< 132 / 171 >

この作品をシェア

pagetop