理論と刀と恋の関係。
* * *




「副長はん、山崎や。

ちょっとええか?」



…土方さんの部屋に着いてしまった。



(きっと今から色々聞かれるのね…。

何で私が英語を使えるのか、とか…このノートに何を書いていたのか、とか…)



それを思うと、段々と焦りが募る。



(どうしよう何て言い訳、ていうか理由?を話せばいいんだろう。
だって英語が使える訳はともかく。
何を書いていたのか?
あなた達の未来を書いていました〜…なーんて言うわけにはいかない…っていうか言えないでしょそんなこと!)



頭の中はパニック。



あれこれ考えていると、手汗がだらだらと出てくるのを感じた。



(…これは精神性発汗ね自律神経のうち交感神経が活発になったことでエクリン腺から汗が分泌されているのよこれは一度発汗するとその汗を止めようと思ってそれがまた緊張になっちゃって汗が出るという悪循環になるから止めないと…ってこれがまた悪循環?ああどうしたらいいの…)



…もう収集がつかない。



パニックの中で、それだけは分かった。



そして。



いくら私が思考にのめり込んでいたとしても、現実は進んでゆくもので。



「は?山崎?

何で天井裏からじゃなくてここから…って、宮瀬??」



からからっと障子が開く音がしたかと思うと、黒い着流しを身に纏った土方さんが現れた。



私と山崎さんという組み合わせが意外だったからか、少し抜けた表情をしている。



「…まあいい。入れ」



しかしそれも一瞬のことで、即座に仕事モードに切り替えた彼は、着流しの合わせを直しながら、私達を部屋に招き入れた。



「失礼します」
「…しつれい、します」



私と山崎さんは一礼して部屋に入る。



出してもらった座布団の上にありがたく座らせていただくと、土方さんは頭を掻きながら、それで…と話を切り出した。



「…何の用だ?」



「それが…」



山崎さんが先程のことを説明する。



沖田さんがいない時に私が何か書き始めたこと、未来の筆記具で外国語を綴っていたこと、涙を流していたこと…



(って、泣いてたことまでバレてるの!?)



流石監察方。



見られたくは…なかったけど。
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