理論と刀と恋の関係。
「あいつの試合、お前も見てただろ?」



試合?中村とやったやつか。



「ああ、見とった」



初めから、終わりまで。



荒っぽさは残るものの、自らの弱点を隠し相手の盲点を突く、良い試合だった。



でも、だから何だって言うんや?



それなら…と副長が続ける。



「お前にだって分かっただろ」



何が…



「あいつは必死で、ここに
壬生浪士組に居場所を創ろうとしたんだ」



_______________居場所…?



「後から聞いた話によりゃ、あいつ、朝餉の後に大広間で、総司に啖呵切ったらしいじゃねえか。

〝此処で生きていかなくちゃいけないんだ〟…ってな」



沖田はんに…あの子が?



「そして、あいつは試合で勝ってみせた」



そうや、あの子は勝った。



「…あんな、小っちぇー身体でよぉ」



それは知っとる、俺も見とった。



あの子は確かに、勝った。



「そして、お前も薄々分かってるとは思うが。

…あいつは賢い」



ああ、それも知っとる。



あんな頭脳戦は、そうそう出来るもんやないからな。



「…役に立つとは思わないか?」



あの子の…頭脳が?



「今はまだ信用出来ない。

だが、最初も言っただろ。

…信じてやりたいとは思ってんだ」



_______まだ、信じられなくても。



「取り敢えずはその頭脳を理由に、参謀として働いてもらう。

…少々強引だがな」



鬼の異名を持つ彼にしては、煮え切らない答え。



それを聞いて、随分とあの子に期待していることを知る。



「────────────ハッ、まあええわ。

そんなに言うのなら、今回の件は今は目を瞑ったる。

お嬢はんは信用出来る、と副長がお思いになるまで、ゆっくり吟味したらええわ」



吐き捨てるように俺はそう言い、天井裏に飛び乗った。



_____煮え切らない思いを、抱えながら。
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