理論と刀と恋の関係。
「僕らの、未来…」



瞳の奥を微かに震わせ、沖田さんは呟いた。



「それを変えることが、君には出来る」



少し躊躇いながらも、彼はまた口を開く。



「君は…僕らについて、変える必要のある未来がある、そう言いたいの?」



その問いに、私は首を横に振り、訂正を入れた。



「“必要” というのは少し違います。

変える “必要” のある未来ではなく、変え “たい ” 未来ですから」



そう、これは義務なんかじゃなくて。



ただ、私の意志であり、自己満足であり、エゴなのだ。



「……」



沖田さんの長い睫毛が伏せられ、その涙袋に影を落とす。



「……」



部屋は静寂に支配され、ふたりぶんの吐息のみが、時折その空気を震わせた。



「…お願いがあるんです」



それを壊したのは___________私。



「協力、してくれませんか」









───────────────〝協力〟



力を合わせる、助け合う、和合する、万邦協和。



まるでそれが綺麗な言の葉であるかのように、私は彼に告げた。



その言葉が彼を縛ると分かっていても…



私は“協力”という言葉を使った。












…いつか親友が言っていたことを思い出す。



『“協力”っていう熟語の中にはさ、“力”が4つも入ってるじゃん?

でさ、私はこう考えたワケ。

権力、圧力、戦力…力は必ずしも尊いものじゃない。

強い弱いで判断されるんだから。

じゃあ、“協力”って、ステキな言葉のようで、実はすごく悪質かもしれないなーって。

そう思わない??



…ねぇ遥花、協力の中の4つの“力”は、何なんだろうね?』














私が言った協力に含まれる“力”



それはきっと、綺麗には程遠いのだろう。
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