理論と刀と恋の関係。
彼女は言った。



変えたい未来があるのだと。



協力して欲しいのだ、と。



(どうして急に…?)



ここ十日余り、僕はずっと彼女を見ていた。



だから、彼女についてそれなりに分かってきたつもりだ。



彼女は可愛くて小さな女の子で、頭が良くて、すごく努力家。



毎日たくさん食べていて、瞳が綺麗で、夜はなかなか寝付けなくて、たまに難しそうに顔を強張らせるのだ。



それが、ここ数日で見てきた彼女。



(…こんな表情、見たことない)



顔は真剣そのもの、両手はきゅっと握りしめて。



それだけならたまに見る〝真剣な彼女〟なのに。



いつも凛としているその瞳が…揺れている。



直感的に分かった。



彼女は今、戸惑っているのだと。



本当は誰にも言わないつもりだったのだろう。



それを…それを言ってくれるということは。



(少しは信用されているのだと、自惚れてもよいのでしょうか…?)



そうだったら、嬉しい。



彼女の言うことはまだあまり分からない。



未来を変える?



僕にはきっと想像もつかないことを、彼女はしようとしているのだ。



まだ浪士組は彼女を信用しきってはいない。



彼女が何かをするのなら、それを支えられるのは自分だけ。



「あなたは、参謀でしょう」



ならば、僕が言うことはひとつだけ。



「壬生浪士組の未来は、あなたにもかかっているんですよ」



浪士組のために。彼女のために。



「協力、しましょう」



やってみるだけの価値は、あるはずだ。
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