理論と刀と恋の関係。
。₀:*゚✲゚*:₀。




やってしまった。



どうしてその可能性に気がつかなかったのだろう。



彼女に屯所内を案内するというのは我ながら名案だと思った。



雨で外には出られなかったし、彼女の邪魔をするのも飽きてきたところだったから。

(僕はとても楽しかったけれど、彼女はいい加減うんざりしてそうだった)



彼女の手を握りあちこち歩き回ったまでは良かったのだが、局長室の前で事件は起きた。



勢い良く開く障子。



中から出てきたのは近藤さんじゃない。



(芹沢さんか…しまった)



芹沢鴨。壬生浪士組のもう一人の局長だ。



いつもはここの向かいにある八木邸にいるのだが。



(近藤さんに用があって来たんだろうけど…なんで今日なんだ)



彼女を芹沢さんに会わせたくはなかった。



彼は女遊びが激しいし、常に酒を飲んでいる…相当な酒乱だ。



気に入らないことがあるとすぐ暴れるその酒癖の悪さで、こっちがどれほど苦労しているか…。



(とにかく、早くここから離れよう)



踵を返そうとしたそのとき________



「沖田か」



芹沢さんに気づかれてしまった。



久しぶりよのう、なんて言いながらこちらに歩いてくる。



「ええ、お久しぶりですね」



適当に相槌をうちながら、遥花さんの前に立った。



(彼女には話しかけるな─────────)



しかし、そんな僕の願いも虚しく。



「…何を隠しておる」



芹沢さんは



「そこのおなご、顔をよく見せい」



彼女に興味を持ってしまったようだ。
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