理論と刀と恋の関係。
自分で芹沢さんを説得しなければ、自分の居場所はない。



そう思うと、自然と言葉が口をついて出てくる。



「私の我儘で、しばらくここに置いていただくことになりました。

ここ以外に、行くところがありません。

どうか…どうか、お願いします!」



真っ直ぐに頭を下げた。



芹沢さんはこの壬生浪士組トップの一人。



嫌われたら…もうここには居られないのだ。



(何としても、この人に嫌われないように…)



そんなことを考えながら、ゆっくりと顔を上げる。



「…ッ、」



顔を上げた瞬間、“恐い”と思った。



目の前の人物から発せられるその鋭い視線に、背筋が粟立つような、そんな感覚。



(やばい…)



くらくらしてくる。



(でも、ここで目を逸らしたら、終わりだ)



必死に芹沢さんの目を見つめる。



「……」



「……」



「……」



誰も喋らない。



そんな状態が、何分続いたのだろうか。



いや、実際は数十秒の出来事だったのかもしれない。



「…ふん」



その沈黙を破ったのは、芹沢さん。



「まあよいわ」



そう言うと、何事もなかったかのように通り過ぎていった。
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