理論と刀と恋の関係。
。₀:*゚✲゚*:₀。




「トシ、これは…」



「あぁ…こいつぁ、しくじったな」






________それは数分前のことだった。




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「最近、ここにおなごがおる、と聞いたのだが?」



その言葉に、俺は顔を歪めざるをえなかった。



芹沢の野郎…いきなり押しかけて来たかと思えば、それか。



まぁ、二週間も隠し通したんだ、上等だな。



「…それは、宮瀬くんのことかな?

彼女はとても頭のよいおなごでなあ。

その頭脳をかって、ここの参謀になってもらったのだが…。

いやはや、誠に申し訳ない。

芹沢殿に相談もせずに決めてしまって…」



予め決めておいた理由を、ははは、と近藤さんが笑いながら言う。



特につっかえたりもせず、自然な説明だ…練習した甲斐があったぜ。



「ほぅ…?頭の良いおなご、か。

それは益々怪しいとは思わぬのか。

もしそやつが教育を受けてきた間者だったらどうするつもりだ?」



芹沢がせせら笑った。



その顔にかちんときた俺は、奴と同じように笑みを浮かべて言う。



「その点は問題ねぇ。

あいつの身の潔白は証明済みだ。

…それとも芹沢さんよぉ、俺らの尋問じゃあ信用出来ねぇってか?」



「おい、トシ…」



近藤さんに窘められる。



…別にいいじゃねーかこのくらい。



とにかく、今度宮瀬にも言っとかないとな…芹沢のことを。



色々と考えていると、芹沢が再び口を開いた。



「そうじゃの…その宮瀬とやらはお主らが決めた者。

儂も認めよう、と言いたいところだが」



はっきりしない物言いに、自然と眉が寄る。



「一応儂はここの筆頭家老なのでな、直に話してみぬことには納得がいかぬ」



その言葉に、今度は近藤さんが顔を曇らせた。



「今からそのおなごに会ってくるとしよう…

…なに、構わんであろう?

お主らの話によれば、そのおなごは二週間程前にここに来て以来、“参謀”という役職の元、ここで過ごしているのだからな。

儂が会ってはならぬ理由は何処にも無い」



そう言われてしまっては、俺も近藤さんも反論のしようがない。



なんとしても、芹沢が宮瀬のところに行く前に、このことを伝えなきゃなんねぇな。



近藤さんの方を見れば、考えていることは同じなようで。



二人で目線を交わし、頷いた。



「ではの、近藤。邪魔したな」



そう言って芹沢が出て行ったと同時に、俺と近藤さんは部屋から出ようと障子に手をかけたのだが___________________



「…あ」

「……」



障子の向こう側では最悪な事態が起こっていた。



「トシ、これは…」



「あぁ…こいつぁしくじったな」



そして、冒頭に戻るわけである。
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