理論と刀と恋の関係。
「ご馳走様でした」



今日もしっかり朝ごはんを頂いた私は、食器を持ちさっさと広間を去ろうとしたのだが、人生、そう上手くはいかない。



「あれ~もう行くんですか、宮瀬サン。

もう少しお話しましょうよ」



「私、急いでるので。

失礼しま──────────────ッ」



(痛った!!!)



こいつ…私の足の小指踏んだ!信じらんない!!



彼は私にサッと近寄ってきたかと思えば、足の小指を踵で踏んづけたのだ。



もちろん私は痛みでよろけてしまい…奴が広げた腕の中に。



がちゃん、重ねた食器が大仰な音をたてる。



傍から見たらバランスを崩した女の子を支えてあげてる格好いい男の人、に見えるのだろう。



(やだやだやだ、冗談じゃないっつーの!)



振り解こうとしても、ヤツに抱かれた肩が妙に重い。



絶対に力入れてるなこいつ…。



頑張って振り解こうとしても、力が強くて解けない。



(ちょっと、いい加減に離してほしいんだけど!

無理!生理的に無理!!)



じたばたとやっていたら_______



「ねぇ…いつまでやってるんです?」



べりっと私を引き剥がしてくれた人がいた。



(お…沖田さん!!!)



救世主だ。間違いない。彼は救世主。



「遥花さんにべたべたひっつかないでください。不快です」



吐き捨てるように言う沖田さん。



その表情はいつもの何倍も冷たい。



初めて街で会ったときよりも、剣を練習したいと駄々をこねたときよりも。



…沖田さんも新見さんが嫌いなのね!



ちょっと怖いけれど、彼に大賛成だ。



そーだそーだ、という意味を込めて、ヤツを睨む。



「…じゃ、またお話しましょーね、宮瀬サン」



ここまでくると流石に新見さんも諦めたようで、最後に私を蛇のような目で睨んだあと、沖田さんに皮肉っぽく一礼して去っていった。
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