理論と刀と恋の関係。
「お願いします____ 」



背を向けて立っている沖田さんの前に回り込む。



「っお願いします…邪魔はしませんから。

ただ見ているだけでもいいんです!

邪魔になるようなことは決して___ 」



…その時だった。



「あなたは、っおなごなんですよ!」



ふいに頭上で怒声が響いた。



吃驚して顔を上げた私に、沖田さんは更に怒鳴る。



「剣なんて、おなごが持つモノじゃない!

あなたには必要ないんです_____ 」



その言葉に、私もつい感情的になっていく。



「女だからって何だというの!?

私は、

私はここで、

生きていかなきゃいけないのよ!」



叫んだせいで乱れた息を整える。



一度声を張り上げると、頭の中にこもっていた熱気がスーッと抜けていくような気がした。



直ぐに、冷静沈着な “いつもの私” に戻る。



(そうよ…ここで生きていくには、まず自分て自分の身くらいは守れるだけの力が必要。

だから私は、剣を使えるようにならなきゃ…!)







「…いいでしょう」



沖田さんがぽつりと言った。



「これから10日間、あなたの道場への立ち入りを許します。

…ご希望なら、稽古もつけましょう」



「!!ありがとうござ_______ 」



「___ただし!」



再び声を張り上げた沖田さんに、反射的に肩がびくついた。



「…10日間だけです。

10日後、隊士の誰かと試合をしてもらいます。

そこで負けたら…もう二度と、剣を持つなんて言わないでください」



早口にそう告げた沖田さんの瞳は、どこか哀しみが含まれていたけれど。



「分かりました。

では、もしも私が勝てたなら、その後も道場に入ることを許可してください」



私はその瞳を真っ直ぐ見つめて、言う。



「…では、行きましょうか」



___稽古に。



という沖田さんの言葉に、力強く頷く。











こうして、私の期限付きの剣術稽古が始まった。
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