理論と刀と恋の関係。
1日目は、構え・姿勢・呼吸・太刀筋・間合・足さばき・残心…などなど、本当に基本的なことを教えた。



基礎の基礎ではあるとはいえ、かなりの量だというのに。



たった数時間でこれだけ覚えてしまった彼女には本当に吃驚だ。



稽古を終えた僕と彼女は、夕餉を食べ(彼女は6杯もご飯を食べていた)、風呂に入り。



彼女の剣術稽古1日目が、ようやく終わろうとしていた。



* * *



僕が風呂から上がり部屋に戻ったとき、彼女は何やらぶつぶつと呟きながら、未来の筆で何か書いているところだった。



「なんですか?それ…」



僕が話しかけると、彼女はぱっとそれを僕から隠す。



「ぁ、沖田さん、おかえりなさい。

これ、今日教えてもらったことをまとめておこうと思って…!」



ふぅん…勤勉、って感じだな。



ていうか、別に隠さなくてもいいのに…。



彼女が何を書いているのか気にならないわけではなかったが、それよりも…眠い。



「…ふゎ、ぁあ」



とにかく、眠い…。



「もー寝ませーん?」



僕は彼女の着物の裾を軽く引っ張りながら言う。



「え!もうですか?

まだ夜の9時過ぎなのにー」



文句を言いつつも、隣に寝っ転がる彼女。



そんな彼女は、僕の方を向くと、恥ずかしそうに言った。



「あの…ひとつだけ、いいですか?」



「?なんですか」



「手、を…握っていてほしいんです」



…実は私、あんまり眠れなくって。



小声でそう付け加えた彼女に眠気を吹っ飛ばされた。



ちょっ、不意打ち…!



赤くなったであろう顔を悟られないようにと、僕は余裕の笑みをつくる。



「いい、ですよ。

遥花さんはやっぱりお子ちゃまですねー」



からかうように言いながら、手を差し出した。



「別にそういうわけじゃっ」



怒りながらも、彼女の右手はしっかりと僕の左手を握る。



触れた君の手は少し冷たくて、小さい。



でもなんだかくすぐったくて、そして暖かい…



僕はそのまま、意識を手放した。



「おやすみ_______ 」



彼女に、いい夢を。
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