理論と刀と恋の関係。
»»»10日前…



「これが、上段の構え」



沖田さんに稽古をつけてもらいながら、私は物凄い焦りを感じていた。



(この調子では、10日で隊士の方を倒せるだけの実力は身につかない_______!)



どうすればいいの…。



沖田さんの教えを頭に叩き込みながらも、策を練り続ける。



ふと、道場の奥の方で1対1で試合をしている人達が目に入った。



「そこ!踏み込みが甘いッ」
「〜ッハイ!!」



良く見れば、それは実戦形式で稽古をしているのだと分かった。



「あれ、気になる?」



いつの間にか沖田さんが隣にいた。



「わっ、すみません!

稽古の途中なのに…!」



咄嗟に謝る私。



「ははっ別にいいよ」



沖田さんは笑って許してくれる。



「あれはね、稽古の1つなんだけど_____ 」



___沖田さんの説明によると、あれはやはり実戦形式の稽古らしい。



“指南役” と呼ばれる人が、毎日交代であの稽古の先生役をするという。



指南役となるのは、沖田さんや斉藤さんなど、腕が立つ人ばかり。



ちなみに、今日の指南役は藤堂さんだ。



じっと見ていると、藤堂さんの癖が良く分かる…。



「遅いっ」
「まだまだァ!」
「ついて来れてないぞーッ!」



見たところ、藤堂さんは素早い斬撃を次から次へと重ねる戦闘スタイルのようだ。



木刀の角度、手の位置、重心の動き。



全てを分析し、インプットしていく。



「…沖田さん」



私は徐ろに立ち上がり、沖田さんに向かって木刀を構えた。



条件反射で、沖田さんも戦闘態勢に入る。



「ちょっと、相手して欲しいんです…」



…木刀は短めに持ち、左足を引いて重心を右足親指の付け根に…



「っ!その、構え…」



…そのまま重心を前に移動、木刀は上段の構え、間合いに入る…



「!!!」



…真上90°に振り上げて手首を捻りその状態で振り下ろす…



「ッッ!」



…右肩、左腕、左太腿、木刀を返して右脇___…



インプットした藤堂さんの動きをアウトプットしていく私。



戸惑いながらも全ての斬撃を受け止めてくれる沖田さん。



…数秒間、道場に木刀が交わる音が響き渡った。
< 86 / 171 >

この作品をシェア

pagetop