理論と刀と恋の関係。
* * *


「…こんなもんかなー」



「なんですか?それ…」



急にかけられた声。



私は慌てて剣術ノートを閉じた。



「ぁ、沖田さん、おかえりなさい。

これ、今日教えてもらったことをまとめておこうと思って…!」



(…うん、間違ったことは言ってないはず!)



沖田さんはへー、とか言ってるし、ごませたのかな?



…なんて、思っていたら。



くいっ。



(…?)



引っ張られた着物の裾。



「もー寝ませーん?」



え、沖田さん!?



わー目擦ってる可愛いー…



…ってそうじゃなくて!



「え!もうですか?

まだ夜の9時過ぎなのにー」



それに、昨日みたいに眠れるのか分かんない…



そんなことを考えながらも、沖田さんの隣に寝っ転がる私。



「あ、の…」



そして、沖田さんの方を向き。



「ひとつだけ、いいですか…?」



恥をかなぐり捨て、彼にお願いをした。



「手、を…握っていてほしいんです。

実は私、あんまり眠れなくって…

えっとだからその…」



〜っ、恥ずかしい!恥ずかしすぎる!!



でも、このままじゃ眠れないことも確かだし…



そろり、と沖田さんの顔を覗けば、彼は目を見開いていて。



心なしかちょっと顔が赤いような…気のせいかしら?



やっぱり駄目かなーと思いながら、返事を待っていると、



「いいですよ。

遥花さんはやっぱりお子ちゃまですねー」



からかうような彼の声が聞こえてきた。



それにむっとしながらも、正直安堵感の方が大きくて。



私は差し出された手をきゅっと握った。



「…おやすみなさい」



隣にいる彼に、ぽつり、呟く。



返事は帰ってこなかったけれど、私の右手に少しだけ、力がこもった気がした。
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